噂の真相(3)
オマケでーすv
「アザー・リグ!!」
聞き覚えのある声に呼ばわれて、アザーは振り向いた。
周りに居たマウーニ達がどよめく。
「・・・リオ?」
輝くような金色のマウニンが走り寄って来るのが見えた。
それが、とてつもなく目立つ。
金色の髪は素直な金糸、ほっそりとした体の皮膚は抜けるような白さ、まるで少女のような甘い美貌を持つ、これでもれっきとした成人した男性である。
美しい彼は結構な有名人で、想いを寄せている者も多いようだったが、そんな彼が並居る求婚者(?)を蹴っ飛ばして義兄弟の相手に選んだのがまだ少年の域を出ないアザーである事は、これまた有名な話だった。
とは言え、その事でアザーの生活に変化がある訳でもない。
相変わらずヒヨッ子の一人として、ソルディンの一室で寝起きしていた。
そんな訳で、普段は回りもそんな事を意識する事もないのだが・・・。
「・・・本当だったんだなあ」
と、アザーの隣りに居た少年が呟いた。
「アザー、アザー、アザー!!」
凄い勢いで走り寄ってきたそのままに抱き付かれて、アザーはたたらを踏んだ。
「な、何だ、どうしたんだリオ?」
どうにか踏み止まって、ぺた〜と胸に張り付いている青年に問いかける。
「・・あ、そうか!」
にゃーんと懐いていたリオが本来の目的を思い出して、顔を上げる。
「アザー、俺!男に襲われた〜〜!!」
「えっ」
アザーの反応が鈍かったのは、無理も無かった。
リオがその外見に反して全然、か弱くなんか無い事をアザーは良く知っていた。
間違っても他の男にいいようにされたり、ましてやそんな事で自分に泣きついて来たりはするとは、到底思えない。
それでも。
左の肩に傷らしい物を負っているのを見て、心臓が跳ね上がる。
もしかして騙されているのかも知れないけど、もし、本当にそうだったら・・。
「アザー、俺・・どうしよう!」
泣き付かれて、アザーは急におたおたし始めた。
リオが傷付いているのなら、やはり義兄弟としては何とかしてやらなくてはならないのでは?
しかし、こういう場合にどんなフォローをして良いのか、アザーには見当が付かなかった。
ギュウギュウ抱きついて来る体に、おずおずと腕を回す。
ギュッと抱きしめると、腕の中でリオが力を抜いて凭れかかって来るのが分かって。
「大丈夫だリオ、俺が居るから・・。
な?泣くなよ。」
「・・・アザー」
何時もの威勢の良さは、すっかり息を潜めて。
可愛いかも・・・と、思いかけた時。
腕の中でジッとしていたリオの肩がブルブル震え始めたかと思うと、耐え切れないかのように笑い始めた。
「あはははっ!」
「リオ?」
パッとアザーの腕の中から抜け出すと、笑いながら距離を取る。
「うっそ、だよ〜ん!v」
「・・・・・お前〜!?」
「俺が、男になんかヤラれる訳ないだろう?
修行が足りないぜ、アザー!」
「・・・・・。」
呆れて黙り込んでしまったアザーを前にひとしきり笑って、リオはまた駆け寄って来る。
「でも、俺を心配してくれたんだな。」
「・・・・・当たり前だろう!」
憮然として言い返すアザーは、腹は立っていたけど、リオがそんな目に遭った訳では無いらしい事に内心安堵していた。
そんな事だろうとは思っていたのだと考えて、溜息を付く。
「お前はいい奴だなあ。」と、リオは嬉しそうだ。
「嘘かもしれないって、本当は・・思ってたんだろ?」
「当たり前だと言っている!」
ぷいと顔を背けたアザーの頬に手を添えて、自分の方に向かせた。
青い目が覗き込んで来る。
少女のように美しい面が、うっとりと微笑んでいるのにアザーが目を奪われたその瞬間。
「俺は幸せ者だ」と、甘く囁いたリオに、アザーは唇を奪われていた。
「・・・・・!!!」
「り、リオ・・・!!」
「ご馳走様〜!」
走り去る相方の後姿を見ながら、アザーはハッと我に返る。
慌てて回りを見回すと、友人達や騒ぎを聞きつけて集まって来た野次馬までが、興味津々という顔で遠巻きにして様子を伺っているのだった。
何から何まで見られていたのに気が付いて、愕然とする。
「〜〜リオ!!」
真っ赤になって怒鳴ると、アザーは人々の目から逃れるように相方を追って走り出した。
・・・もう、絶対、リオの心配なんかしないぞ!!
アザーは恥ずかしさに泣きそうになりながら、心に強く誓ったのだった。
<終わり>
<あとがき>
とか何とか言っても、根が真面目なアザーのこと、
同じように騙されたり担がれたりしそうです。
まあ、あれでリオはアザーに惚れてますんで・・。
(2005年4月4日UP)